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心身両面の相談相手

最後に、知人Aさんの乳がんの治療経過を記しておく。Aさんは、B大学病院のがん手術を断り、転院先になった東京厚生年金病院外科部長の志田晴彦医師の手で治療を受けた。志田医師は医師歴27年目。大腸がんの治療テクニックでは国内屈指だが、ほかにも、転移性肝がんや乳がんの手術を手がけ、外科手術がもっとも上手な医者の一人である。

名人芸のメスさばきに加え、がん治療の丁寧な説明、朝夕二回の病棟回診、退院後のフォロー(経過観察)のよさと三拍子揃い、誠実で紳士的な人柄は多くの患者家族から信頼されている。今回のAさんの場合、本人から頼まれてその場に同席したが、志田医師の説明は大変わかりやすかった。

がんのできた部位と大きさの話からはじまり、手術前の胸部X線(肺転移の有無)や骨シンチ(骨転移の有無)、MRI(がん病巣の大きさ)の検査結果などが、約一時間をかけて説明されたのだ。入院三日目に行われた乳房温存の手術は約二時間、リンパ節転移なし。

Aさんは、志田医師の手でほぼ完璧な乳がん手術を受け、その後の補助放射線療法のため一ヵ月ほど通院したが、現在は、元どおりの元気な暮らしを取り戻している。今回の早期乳がん治療では、入院手術代としてAさんが支払った医療費は、手術手技料26万8730円、検査手技料5万1850円、入院料(十四日間)23万6610円などを含め、保険医療費総額が71万9410円。

他に食事療養費を加え、退院時の窓口負担(三割分)は22万6356円となった。この入院手術代だけを見れば、ほぼ平均的な「病気の値段」と言えるが、医師による説明、がん手術の丁寧さ、手術後のフォローなどの部分は保険医療費に一切含まれず、その人がかかった医者次第だ。その意味でも、がんの医者のかかり方は十分考えたうえでの選択が必要である。

日本医学界の重鎮のひとり、日野原重明・聖路加国際病院理事長は、よい医療を受けるための医者選びの極意として三つの心得を説いている。

1.あなたに対して必要な時間を取ってくれない医者、診察室で話をするときに目と目を合わさないような医者は敬遠する。そういうタイプの医者は本気で患者の話を聞いていないから、別の医者を探したほうが無難である。

2.患者は、自分の健康史を一度きちんと整理してみる。既往歴から家族の病歴、アレルギー反応の出た薬剤名。女性なら生理の開始時期、流産の有無など個人情報を事前に整理しておけば、医者も助かるし、治療上でも大いに役立つ。

3.患者が手書きの病歴を見せたとき、「素人のくせにこんなものを書いて」などという医者のところには二度と行かないこと。逆に「よく書けましたね。これ、預かっておきます」と受け取ってカルテに貼るような医者なら安心してよい。

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肺がんからの生還

「神奈川から肺と胃のがんをなくす会」が発足しだのは1976年のこと。東京、宮城、愛知などと並び、肺がんと胃がんの早期発見のための体制作りでは全国の先駆けとなったが、同会の肺がん生還者第一号S氏は1918年生まれの男性である。

80年、S氏が62歳のときだ。地元の病院でのX線画像検査の結果、担当のE医師が左の鎖骨下に隠れるような白い陰影を見つけた。熟練の専門医でも見逃してしまうほどの微小なもの。肺結核か肺がんのどちらかだ。最初に肺結核の喀痰培養検査をしたらマイナスという結果が出た。

「その時点で80パーセントは覚悟を決めました。しかし、残りの20パーセントがもうひとつ釈然としないのが気になって・・・」そう語るS氏は当時、日本冷凍食品検査協会に長く勤務する検査のスペシャリストであった。職業柄、肺がんを自分で納得するのに「残りの20パーセントの確認」を曖昧にはしたくなかったのだ。

「私は化学分析の専門家でしてね。我々の検査の仕事にはひとつのセオリーがあって、あらゆる検査というものはミスを防ぐために必ず2回はやるもの。私は、肺がんの手術をするのだから、もう一回確認してみようと考え、国立がんセンターの検査を受けました」

セカンド・オピニオンを求めた国立がんセンターでは、内視鏡部長のI医師が同じ診断結果をS氏に伝えた。「こんな小さな病巣を、E先生はよく見つけましたね。大丈夫、これだけ早期の肺がんだと手術で治ります」検査データ上も、S氏の肺がんは80パーセントが100パーセントになった。

「あとはE先生を信頼しておまかせしました」左肺上葉部切除の肺がん手術は2時間半で終わった。「根治手術ができましたから、予後良好です」とE医師が太鼓判を押したとおり、S氏の早期肺がんば20年間再発もなく、完全に治った。

がん治療の世界では近年セカンド・オピニオンが当たり前のように語られるが、自分が納得できたら元の主治医のもとで治療を受けるのが本来のあり方だ。20年以上も前に、S氏はそれをさりげなく行った。この点でも「肺がん生還者第一号」の称号に値する優等生患者と言える。

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インフォームド・コンセント、セカンド・オピニオン

がん医療の受け方の問題は、患者個々の事情が異なり、およそ一般論などで語られる性質のものではないとも思う。特に病名告知の仕方、治療法の選択、がん診療体制などで真っ先に問われるのは、

1.だれのために、いつ、どこで、だれが、どのように教えるか(がん告知の仕方とその後のフォロー体制のあり方)。

2.がんを教えた後の医療側ぱ、だれが、どのような責任をもつか(治療法の提示とその後のがん診療システムのあり方)。

3.患者本人と家族は、何を、どこまで理解すればよいか(患者家族による治療法の選択と状況判断)。

ということである。これは同時に、患者側の新しい生き方とも関連してくる。すなわち、患者の自己決定権やインフォームド・コンセント、セカンド・オピニオンなどの問題だ。自己決定権とは、次のような考え方である。

「患者は、医師および医療従事者の誠意ある説明、助言、協力、指導などを得たうえで、自由な意思にもとづき、診療、検査、投薬、手術その他の医療行為を受け、選択し、或はそれを拒否することができる」

「成人に達し、健全な精神をもつ人間はすべてみずからの身体になされることを決定する権利を有する。したがって患者の同意を得ないで手術を行う外科医は暴行を犯すことになる」

インフォームドーコンセントについては、以下の説明がわかりやすい。

「リスクを伴ったり、別の方法があったり、または成功率の低いような治療や処置について患者に同意を求めるにあたっては、あらかじめ、しかるべき情報を提供し、当然ながら、提供される情報は患者に理解できる言葉で説明されるのでなければならない」

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自分の病気を正しく理解しよう

厚生労働省の人口統計をみると、わが国では、21世紀の幕開けとともに「がん死30万人時代」が到来した。がん死亡者の数は2001年で20万658人(全死者の31,0パーセント、2002年にぱ前年より3628人増の30万4286人。年齢別に見ても、50代から60代、70代、80代まで死因トップである。

そんななか、がんに関しては「仕方がない」という日本社会のマイナス思考がまだ根強くある。がんだからお医者さんの言うとおりにするしか仕方がない、がんだから治らなくても仕方がない、がんだから死ぬのは仕方がない・・・はたして、それはどこまで本当なのか。

実際の話、治らないがんより治るがんのほうが多いし、がんにかかった人のすべてが命を奪われるわけでもない。がんにまつわる「仕方がない」という社会のつぶやきは、一昔前の誤解や妄想が徴妙に働くゆえだろう。意味のない誤解や妄想には惑わされず、がんを上手に治すためには、どうすればよいか。

その答えは、自分の病気を正しく理解することだ。がんは一人ひとりが別の病気と言われるくらい、種類や進行度によって治癒率や治療法が違うもの。病気を怖れるよりも、自分のがんの本体を知り、前向きな姿勢で病気と向き合うほうが元気になれると思う。それが人間の心の強さである。

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がん手術が決まったときの質問28項目

患者とその家族は、医療の素人とはいえ病気の「当事者」だ。がんの手術についても、事前に確認すべき項目がいろいろある。わからないこと、疑問に思うことを自分の頭のなかで一度整理してみよう。想定するかぎり、がんの手術に関連する確認(質問)では合計28項目。以下、がん手術の流れに沿う形で全28項目を紹介しておく。主治医(手術執刀医)との面談時には、これをヒントにして確認(質問)項目のメモを作り、役立ててほしい。

手術前の確認(質問)5項目・・・手術前の検査日程と入院日の決定

・手術前に必要な検査の種類?
・それぞれの検査の予約日は?
・患者家族に対する手術説明はいつになるか?
・入院予定日は?
・入院期間の大体の目安は?

手術前の確認(質問)16項目・・・がん手術の説明

・手術前の検査の結果はどうだったか?
・手術前に予想されるがんの進行度は?(再確認)
・最終的に決定された手術名は?(再確認)
・その手術はどのような方法で行われるか?
・手術の成功率は?(再確認)
・手術の予定時間は?
・手術に伴うリスクは?
・手術後に起こりうる合併症は?
・大体の目安として、回復の経過は?
・手術後、がんの補助療法は必要か?
・がんの補助療法が必要な場合、どのような日程か?
・手術に伴う後遺症はあるか?(その後遺症は改善されるか?)
・ふつうの食事はいつから摂れるか?
・手術後のリハビリ開始の予定は?
・手術後、いつごろ退院できるか?
・手術後の暮らし方はどう変化するか?(社会復帰できる一応の目安)

手術終了後の確認(質問)7項目・・・手術結果の説明

・手術の結果はどうだったか?
・がんは全部取りきれたか?
・がんの広がり具合、転移の有無などは手術前の予想どおりか?
・手術前の説明どおりの術後経過と考えてよいか?
・もし手術前の予想と違ったとすれば、何か、どのくらい違ったか?
・手術後の見通しは手術前と何か違うことはあるか?
・病理検査の結果はいつ出るか?

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治りやすいがんか、治りにくいがんか

がんを治すための手術の選択がある。がんを診断し、がんの治し方を決めるのは医師の第一の仕事である。これを「医師の裁量権」と呼び、医学上の専門的な判断をする代わりに、すべての患者に対して、つねに最善の治療を提供する責任があるとされる。ここでは、まず、6つの質問項目がある。

・手術はなぜ必要なのか?
・もし手術をしなかったら、どのような結果になるか?
・自分のがんを治すために何種類の治療法があるか?
・自分のがんを治すための最善の手術はどれか?
・今回予定される手術は、標準的な治療法か?
・手術をしても再発する可能性はどのくらいか?

がんの手術はなぜ必要か。第一の理由は、そのまま放っておけばがんが増殖して手遅れになるからだ。大腸がんを例にとれば、がんがだんだん大きくなって腸閉塞になるかもしれないし、あちこちに転移して最後は命取りになる。乳がんの場合では、やはりがんが大きくなり、そのうちリンパ節や骨、肺、肝臓などに転移して手遅れになる。ほかのがんも理屈は全く同じだ。

がんの手術を断り、手術以外の別の治療法を選ぶ患者の姿があるが、まず知るべきは、治りやすいがんか、治りにくいがんかである。そして、治るがんは早めに手術を受けること。このとき自分のがん手術について十分な説明を得られて納得できたら、すっきりした気分になるし、覚悟を決めて手術にも臨める。

つまり、患者と医者の会話術とは、治療情報を共有し、互いが信頼を深めるためのコミュニケーションに他ならない。見知らぬ他人同士が顔を合わせ、一方は患者、片方は医者という立場で向き合うのだ。何を質問するかという以前の問題として、ものの聞き方、話し方などで礼儀や気遣いを忘れないことである。

たとえば、担当医があるがん手術法を患者家族に提案したとき、それが最善の手術法なのかどうか。良くも悪くも、大部分の患者家族は医療に疎く、何が最善の治療であるかを全く知らない。なお困ったことに、同じがんでも、病院や医師によって治療法が違えば、治療成績も違う。

この場合「先生、やはり、これがいちばんいい治療法なんでしょうね」とやわらかい聞き方なら医者は気を悪くしない。しかし「先生、それが本当に最善の治療法と言えますか?」と詰問調で聞けば、医者も気分はよくないはずだし、わざわざ医者の機嫌を損ねることはないのである。

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がんの本体を知る8項目

がんとわかったとき、患者側が真っ先に知りたい3つの治療情報がある。

・治りやすいがんか、治りにくいがんか?(がんの治癒率)
・最善の治療法は何か?
・手術して治る可能性はどのくらいか?(手術の成功率)

これに対し、担当医は、まず、がんの本体を検査画像から予想する。がん治療の第一段階だが、大体、次の5つのことがわかってくる。

・がんの病名(確定診断名)は?
・どこの部位にできているか?
・どのくらいの大きさか?
・がんの広がり具合と転移の可能性は?
・がんの進行度(ステージ)は?

これら5項目は、がんの治癒率や手術の成功率など、治療の難易度を予想するのに役立ち、患者側が聞く前に、ふつうは担当医から必ず説明がある。早期がんの場合、がんの治癒率や手術の成功率ぱ高い。がんを怖れず、前向きな気持ちになれるという意味では、患者本人が知っておきたい治療情報だ。

ところが大抵の場合、患者家族は医師の説明を正確に覚えていないという。「あなたはがんです」と教えられたとたん、頭が真っ白になるからだ。「なんで私が?」「このがんはいつごろできたんだろう?」この思いだけが患者本人の頭一杯にふくらみ、病気の説明などは全く上の空になる。

その結果、時として医者と患者家族のあいだでは会話上の食い違いが起きやすい。これもがんの医療現場ではよくある話だ。そうならないためには、患者家族側の「知恵」が必要になる。

まず一つ、何度も繰り返すが、医師と話すときはメモを取ることだ。たとえば、Aさんの病気の説明を横で聞いた際のメモはこうだ。

・がんの病名(確定診断名)は? → 右乳がん
・どこの部位にできているか? → 右乳房の右下方部分
・どのくらいの大きさか? → 超音波画像上では最大18ミリ
・がんの広がり具合と転移の可能性は? → 今のところ、なし
・がんの進行度(ステージ)は? → ステージⅠの早期がん

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がんの検査法

「がんの疑い」が生じると精密検査を受け、がんであるかどうかを詳しく調べる。最初の確認項目は次の三つである。

・がんなのか、がんでないのか?

・それを調べるのに必要な検査は?

・それぞれの検査のスケジュールは?

先のAさんぱ最初、がん検診の乳房超音波と乳房X線検査(マンモグラフィ)により「右乳がん」が疑われたが、しかし検査画像上の異変は、乳腺症や乳腺線維腺腫(いずれも良性の病気)である可能性も考えられた。そこで次に、細胞診というがん検査を受けることになった。

細胞診とは、細い針を刺して「怪しい細胞」を採り、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる方法だ。結果は「クラス3」。さらに二週間後、もう一度、太い針を刺して調べる検査(組織検査)が行われ、今度は「クラス5」と判定された。

ちなみに、がんの診断の決め手となる細胞診と組織検査の判定法とは、

クラス1・・・異常細胞がない(全くの正常である)。
クラス2・・・異常細胞ぱあるが、良性のものである。
クラス3・・・異常細胞があり、悪性(がん)とも良性とも結論が出せない。
クラス4・・・異常細胞があり、がんの疑いがかなり強い。
クラス5・・・異常細胞があり、明らかながんである。

という五段階に区分けされる。がんの進行度とカン違いしやすいが、前述のとおり、これは「がんかどうか」を調べるものだ。組織検査クラス5のAさんは、明らかながんであることが確定した。参考までに、がん検診からがんの診断を受けるまでの検査内容と医療費を掲げておく。

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「100パーセント治る」は本当か

たまたま知人のAさんから「乳がん手術を受ける」という相談があった。Aさんは50代後半の主婦だ。それに先立つ2ヵ月前、彼女は、地元にあるB大学病院のがん検査で右乳房に異常所見が認められ、「再検査」と「再々検査」のあと、右乳がんと診断されたという。

B大学病院のC医師の診断所見は、「がんの大きさぱ長径21ミリ、がんの進行度はステージⅡ」というものであり、Aさんは乳房を全摘出する「乳房切除術」をすすめられた。「乳房を手術で全摘出すれば、あなたのがんは100パーセント治ります」とC医師が教え、Aさんも一度はB病院への入院手続きを済ませた。

がん医療の現場ではよくある話だが、がんが100パーセント治ると言われたら、大抵のがん患者はそうするだろう。ただAさん本人の話を聞き、私はちょっと首をひねった。

まず一つ、がんの治癒率に「100パーセント」はありえない。ひと昔前の、がんを告知しない時代には、がんじゃないから大丈夫ですよ、という気休めの意味を含め、医師が「100パーセントのがん手術」をすすめた。だが、21世紀の今の時代に、同じ言葉を口にする医者はあまり信用しないほうがよい。

以下のような乳がん治療の実態もある。早期乳がんは、乳房全摘出が必要な進行がんとは違い、小さながん病巣をメスでくり抜くように部分切除し、できるだけ乳房の形を元どおりに残す治療が行われる。これが乳房温存療法である。

ただ、外科的テクニックとしては比較的やさしいせいか、大学病院などは乳がん手術を「若手研修医の練習」と位置づける。そうかと思えば、医師個人の考え方(勉強不足?)によって、乳房温存で治るケースなのに乳房全摘出が行われることもある。患者側の目には触れにくい、がん医療の裏側の世界である。

目に見えない世界と言えば、乳房温存療法ぱ病理の検査体制がしっかりしていないと「危険ながん手術」になってしまう。というのも、乳房温存の手術中に行われる病理検査の段階で、微小ながん細胞がうっかり見逃されると、やがて再発して最悪の結果を招くことになるからである。

がん手術の場合、このような病理検査代は「手術料」に含まれるのだが、国の定めた保険診療点数によって全国一律と決まっている。がん患者の生死が分かれる部分なのに、がん医療の「質」をいっさい問わずに「公定価格」というわけだ。世間一般の常識で考えれば、これもおかしな話である。

もう一つ、Aさんが乳がんを発病する半年前の2002年10月、世界的な医学雑誌「ニューイングランドジャーナル・オブ・メディスン」同月17日号に、乳がん治療に関する画期的な治療データが報告されていた。早期乳がん治療の生存率(治癒率)は、乳房温存と全摘出手術ではどれくらい違うか。

これについて、アメリカとイタリアの医療チームが過去20年間にも及ぶ患者調査(対象600人)を行い、「生存率は同等」という医学上の結論が出たのである。これがすなわち「信頼度一」、科学的根拠がいちばん高い乳がん治療の新ルールだ。世界中の医師が注目しており、国内でも第一線の乳がん専門医なら当然知っていなければならない。

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EBM(科学的根拠に基づく医療)の五段階

がんの治し方について、最近は、EBM(エビデンス・ベースド・メディスン=科学的根拠に基づく医療)がさかんに提唱され、「がんの診療ガイドライン」と呼ばれる新しいルールが登場した。診療ガイドラインとは、科学的根拠の高い治療データに基づき、がんの種類や病状別に標準的な治療上のルールを定めることだ。

そして今、がんの標準的な治療法も、科学的根拠となり得る信頼度の高さに応じ、次の五段階に分けられる。

1.信頼度一・・・多くの患者を対象とする大規模な臨床試験でその治療効果が証明されている(科学的な根拠がもっとも高く、世界標準の治療法)。

2.信頼度二・・・少数の患者を対象とする小規模な臨床試験でその治療効果が証明されている(信頼度一に次いで科学的根拠が高い治療法)。

3.信頼度三・・・他の医学研究・報告(統計学なども合めた科学的データ)により治療法が判断される(科学的根拠では信頼度一、二に劣る治療法)。

4.信頼度四・・・権威ある人や団体の意見(医学界内部の力関係、日本人の国民性など別の要素)で治療法が決定される(科学的根拠は弱い治療法)。

5.信頼度五・・・医師のカンと経験に左右される(科学的根拠は弱い治療法)。

当然のことながら、力のある医師は、がん患者の治療に当たって世界標準の治療、すなわち最善の治療法をいち早く取り入れる。一方、少し前まで日本国内では医師の側がその治療技術に対する評価に無関心な傾向が強かった。そのためEBMを基本理念とする診療ガイドラインの作成も大きく立ち遅れ、カンと経験による時代遅れな治療が今なお日本中で横行している。その結果、病院や医師によって治療成績が違うことが医師の間では公然の秘密とされてきた。

はたして、あなたの受けるがん治療はどのレベルか。上記の信頼度一なら安心できるけれど、信頼度四とか五のレベルでは、治るがんも治らない。あとで後悔しないためにも、患者側はがん治療の「中身」を知るべきだろう。特に早期がんの治し方には三つのポイントがある。

1.がんの治し方が上手な医師を選ぶこと(十中八九は治る)。
2.自分のがんの本体をよく理解すること(治る病気を怖れる必要はない)。
3.信頼度一の標準的な治療法を選ぶこと(あとで後悔しないですむ)。

そのためにも、医者を見分ける目を養い、病気の説明を正しく理解しなければならない。がんの手術を受ける前には、何を、どう聞けばよいか。この章では、患者側からの「がん手術にまつわる質問」を具体的に考えてみる。

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